人間の歯は乳歯が生え替わり18歳頃に永久歯歯列が完成します。20歳前後の頃の歯は欠損歯も最も少なく、歯の生涯を観察すると、この時期の口腔内は最良の状態にあると言えます。その後齲蝕(むし歯)や歯周病、咬合病などで加齢とともに歯の崩壊が進みます。
我々歯科医療人はこの崩壊するスピードをできるだけ遅くし、いつまでも患者様の口腔を年齢に応じて最高の状態に維持してあげる事が日頃大切な事だと感じております。
このために最も大切な事は口腔の予防処置(口腔ケアー)です。定期的口腔ケアーで、歯科衛生士による検診、クリーニング、早期の齲蝕、歯周病の発見、そして歯科医師による早期治療がなによりも大切になるわけです。
残念ながら、日本の歯科医療はこの予防システムがまだしっかり確立されておらず、先進国と比較し遅れているのが現状です。米国では2人に1人が半年に1回程度、定期的に歯科医院で口腔ケアーを受けているのに対し、日本は3人に1人と言われております。
定期的に口腔ケアーを施すと、目に見えて歯肉や口腔内の状態が改善されてくるのが患者さんも認識できます。口腔内は他の器官と違って予防効果がはっきり直視できる器官なのです。
スタッフと患者さんの共同作業で行われる口腔ケアーが良好に行われ、患者さんの歯肉が改善されてくる様子は私達医療人にとって感動するものがあります。
また最近は治療終了後の口腔ケアーだけでなく、全く健全な口腔状態でも、齲蝕(むし歯)や歯周病予防のために、口腔ケアーを目的に来院する患者さんも少しずつで増えており、誠に喜ばしい事であると思います。
どうかいつまでも口元に気を使われ、美味しい食事をされながら若々しく長生きして頂きたいと思います。
人間の歯はどのようにして喪失していくのでしょうか。
齲蝕(むし歯)、歯周病で歯が喪失するのは一般的ですが、咬合のバランスが崩れると歯が喪失するスピードが増す事をご存知でしょうか。 例えば下の顎の右奥歯2本を歯周病で喪失したとしましょう。そうするとその部位は一般的には取り外し式の義歯が保険適応となります。
しかし義歯は咬む力が自分の歯より弱いので、どうしても咬む力の強い他の部位で咬みたがります。その時点で片側咬みが始まります。しかしこの片側咬みが問題となるのです。
人間の歯は両側で咬んで、初めて長く保つ事ができるようになっているのですが、この咬むバランスが崩れる事により、片側咬みの習慣がつくわけです。 つまり片側咬みをしている部位の歯に2重の負担過重がかかるわけです。
その結果、もし負担過重の歯がブリッジだとしたら、ただでさえ、自分の歯より多い歯数の上部構造ですから、支台となっている歯はたまったものではありません。
その部位のブリッジを支えている支台の歯の崩壊のスピードは早くなるのは当然予想されますね。またもし負担過重の歯が神経がない歯であればどういう事が予想されるでしょう。
今、歯の崩壊の原因の一つとして考えられている負担過重による歯冠破折、歯根破折が起きやすくなり、これにより歯の崩壊スピードを増す事になるわけです。
つまり私達医療人は歯の欠損部を修復するに際し、できるだけ咬める義歯なりインプラントを装着する事が求められているわけです。
この事が片側咬みを予防し、しいては他の歯の崩壊するスピードを減らしてあげる事になるわけです。ですから、私は自分の歯とほとんど変わらない咬めるインプラント治療は、単に欠損部位の咀嚼の回復のみでなく、他の歯の負担荷重を軽減し、しいては残存歯の崩壊のスピードを減じてあげれるすばらしい予防治療法と考えております。
〈 当医院スタッフ 〉